ダンス・ダンス・ダンス

村上春樹の作品は,これまで「ノルウェイの森」「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」と紹介してきましたが,3番目に好きなのが「ダンス・ダンス・ダンス」。

「世界の終わり・・・」が1985年,「ノルウェイ・・・」が1987年,そして「ダンス・・・」が1988年発表と,どうもこの80年代後半の頃の文章が僕は一番好きみたいです。

この作品は「風の歌を聴け」(1979年),「1973年のピンボール」(1980年),「羊をめぐる冒険」(1982年)と続く,いわゆる“羊三部作”のその後のストーリー。高3の頃,「ノルウェイの森」を読んだ後,すぐに「ダンス・・・」を読みたい気持ちを抑えて,何とか三部作を制覇してから読んだ記憶があります。三部作を読まなくても楽しめるでしょうが,やはり読んでからのほうがより楽しめるでしょう。

この作品は数ある村上春樹の長編小説の中でも,「国境の南,太陽の西」(1992年)と並んで,かなり読みやすく分かりやすい部類に入るのではないでしょうか。

ここでの主人公「僕」は村上作品の中でもかなり態度や主張が明確なほうで,その点“語りすぎる”ということで一部のコアなファンの中には低く見積もる方もいるようです。ただ,僕はそのへんが作品全体の分かりやすさやすがすがしさ,すっきり感をもたらしているように感じられて,好きな作品となっています。

特に,本作中で何度も出てくる60年代から80年代にかけてのアメリカン・ロック&ポップスの作品群のセレクト,34歳の僕と13歳の少女ユキとの楽しい会話,五反田君という人物像などが秀逸です。また,60年代から80年代にかけての経済の変化とそれに伴う人々の暮らしや考え方の変化についても考えさせられます。

この作品の中で僕の好きな一文は,Amazonでも紹介されていましたが,共通の知人が亡くなり,その葬式の後に後悔の言葉を口にした年若いユキに対して,僕が言った次の言葉。

「後悔するくらいなら君ははじめからきちんと公平に彼に接しておくべきだったんだ。少なくとも公平になろうという努力くらいはするべきだったんだ。でも君はそうしなかった。だから君には後悔する資格はない。全然ない」

「人の生命というのは君が考えているよりずっと脆いものなんだ。だから人は悔いの残らないように人と接するべきなんだ。公平に,できることなら誠実に。そういう努力をしないで,人が死んで簡単に泣いて後悔したりするような人間を僕は好まない。個人的に」

昨今,いじめ問題がより深刻なかたちで表面化していく中,人に対して公平に接することは,実際にはなかなか難しいことだとは思いますが,やはりそう努力すべきだと改めて思います。

ダンス・ダンス・ダンス〈上〉 ダンス・ダンス・ダンス〈上〉
村上 春樹 (2004/10)
講談社
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